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サルコイドーシス

はじめに

 サルコイドーシスは肺や眼、リンパ節、皮膚、神経、心臓など全身の様々な臓器に「肉芽腫」という結節(腫瘍のようなかたまり)が形成される疾患です。眼の病変は肺に次いで多くみられ、ぶどう膜炎という眼の炎症を生じます。サルコイドーシスによるぶどう膜炎はわが国におけるぶどう膜炎の中でも頻度の高い疾患です。病気の原因は不明ですが、何らかの病原微生物の感染がきっかけとなって体の中で免疫反応が過剰になりアレルギー反応を起こしてサルコイドーシスが発症すると考えられています。患者数は年々増加傾向を示しており、厚生労働省の登録患者数は平成26年の時点で約2万6千人に達しています。男性35%、女性65%と女性にやや多く、20-30代と60代に緩やかなピークを持つ2峰性の分布を示し、特に50代以降は女性が多いです。

症状について

 眼の症状として、ぶどう膜・網膜の血管の炎症(網膜静脈炎)が起こります。目のかすみ、まぶしさ、充血、黒い小さい点が飛ぶ(飛蚊症)といった症状があり、慢性の経過となることが多いです。眼の中で炎症が強く起こったり、長い間炎症が続くと網膜の中心部(黄斑)が腫れて網膜が障害されたり、また緑内障や白内障などが合併すると視力が著しく低下することがあります。

 全身の症状では、体重減少、発熱、だるさ、痛み、リンパ節の腫れ、咳や息切れなどの肺の症状、皮膚の結節、神経の麻痺、不整脈などの様々な症状がみられることがあります。

検査・診断について

 サルコイドーシスによるぶどう膜炎は眼全体に炎症が起こることが多いです。一般的な眼科検査に加えて、造影剤を使った検査などを行います。眼の所見として、前房(ぜんぼう:角膜と虹彩の間の空間)に炎症の細胞が浸潤すること、角膜と虹彩のつけ根に結節や癒着ができることが多いです。さらに硝子体(しょうしたい)のにごり(混濁)、網膜の血管の炎症、網膜の滲出斑(しんしゅつはん)、視神経の炎症などがみられます(写真)。炎症が強い場合、眼圧が上昇して緑内障を起こすことがあり注意が必要です。

 サルコイドーシスでは肺、皮膚、心臓などの全身に病気が生じるため、全身の検査(血液検査、ツベルクリン検査、胸部レントゲン検査、心電図検査)が必要になります。特にサルコイドーシスの患者さんではツベルクリン検査が陰性になることが多く、重要な所見となります。また肺のリンパ節が腫れて大きくなることが多いため、胸部CT検査や呼吸器内科で気管支鏡検査を行うことがあります。さらに皮膚やリンパ節などを採取して病理検査をする場合もあります。

 サルコイドーシスの診断・重症度は厚生労働省で決められた診断基準や眼の所見による診断基準があります。上記で行なった様々な眼の検査、採血検査、ツベルクリン反応、胸部レントゲン検査、気管支鏡検査、病理検査などから総合的に判断されます。

治療について

 眼のサルコイドーシスは、比較的視力予後は良く重大な合併症を起こすことは少ないですが、慢性化することが多い病気です。ぶどう膜炎や網膜の血管の炎症が軽い場合は、炎症を抑えるための副腎皮質ステロイド(以下ステロイド)薬の点眼、虹彩の癒着を防ぐための散瞳薬(さんどうやく)の点眼で治療を行います。

 眼の炎症が強い場合、視神経に炎症がある場合、硝子体の混濁が強い場合は、ステロイド薬の注射や内服が必要になります。ステロイド薬の内服で十分な治療効果が得られることが多いですが、ある程度の長期間(3-6ヶ月)にわたって継続することが必要です。ステロイド薬の内服は薬の量を減らすと再発する可能性があること、炎症の慢性化が多いこともあり、自覚症状がなくなっても定期的な通院が必要です。ステロイド治療の効果が不十分な方は、免疫抑制剤の内服や生物学的製剤の注射による治療が必要となる場合があります。

 硝子体の混濁が極度に強い場合や、網膜に増殖膜(ぞうしょくまく)が形成されて網膜剥離(もうまくはくり)が生じている場合、硝子体手術が必要となることがあります。白内障や緑内障が進行した場合、また黄斑のむくみ(黄斑浮腫)などの合併症が生じた場合は、それらに対する治療も行います。

 眼以外の全身症状として大きな障害を起こすことは少ないですが、長い経過の中で心臓や脳神経に肉芽腫ができて生命に危険が及ぶことがあります。そのため、たとえ症状がなくても、定期的に専門の科で全身の検査(血液検査やレントゲン撮影等)を行って、全身状態の変化について確認しておくことが重要です。

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